なぜF分布、カイ二乗分布と呼ぶの?

FはFisherで良さそうですが、カイ二乗はその構造に由来するようです。

F

http://www.kwansei.ac.jp/hs/z90010/sugakuc/toukei/fdist/fdist.htm

カイ二乗

http://w3.cc.nagasaki-u.ac.jp/contrib/Excel/yougo2.html

http://www.matsusaka-u.ac.jp/~tankei/lectures/stat/stat_lect/stat_lect_2003a.html


http://www.tokuyama.ac.jp/home/~n-harada/statistics/tebiki4/tebiki4.html

で、ついでに見つけましたが、tも私が聞いたのより(studentの二つ目のt)ちょいとややこしいエピソードがあるようです。

http://www.nuis.ac.jp/~mat/fpr/fpr1997/0119.html

>> Eisenhart,C.(1979) On the transition from "Student's" z to

>> "Student's" t. Amer.Statist. 74, 48-51.

紹介していただいた Eisenhart 論文の掲載巻号頁は,Vol.33, No.1,

Pp.6-10 でした。大変おもしろい論文でした。簡単に私なりの要約を

書いてみます。

(1) Gosset (ペンネーム"Student") が 1908年に発表した論文は,

正規母集団からの標本に基づく比

z=(標本平均-母平均)/標本標準偏差

の分布を求めたもので,これは,現在tと呼ばれているものとは

z=t/sqrt(n-1)

という関係にある。(一種の効果量です。)

(2) Fisher は,数学的により洗練された方法でzの分布を導き,

Gosset に手紙で知らせ,そこから手紙の交換が始まった (1912年)。

(3) Gosset は 1908年の別の論文で相関係数の分布について書いて

いるが,Fisher は,さらに厳密な結果を導き,特に Gosset 自身

のzの分布との関係を明らかにした(1915年)。

(4) 1922年の手紙で,Gosset は相関係数の分布より,回帰係数や

偏相関係数の分布が知りたいと書いたところ,Fisher は短期間で

この問題を解き,しかもそれらが本質的に Gosset のz分布である

ことを明らかにした。

(5) こうした研究の過程で,Fisher はzより,それに自由度を乗じ

た量(現在のt)のほうが,理論的により有用であることに気付き,

Gosset もそのことを理解するようになってきた。

(6) dに自由度を乗じた量の分布の表を用意する過程で,Fisher は

おそらく単に計算上の慣習からxという記号を使っていたが,Gosset

は,Fisher とは異なる(1908年論文以来の)方法を用いていたため,

その区別のために,Fisher への手紙の中でtという記号を用い始め,

1925年発表の新しい分布表でもその記号を用いた。

ということのようです。Fisher が Gosset 以上にt分布の数学的性

質を明らかにし,その応用可能性の広さを発見し,普及させてにも関

らず,その後も Fisher ではなく,Student の名でこの分布が呼ばれ

た背景には,Gosset の1908年の研究の偉大さに対する Fisher の敬意

があったようです。なお,Gosset の1925年のt分布表の論文では,そ

のtの形は,Fisher の示唆を受けてのもの,と名言しているというこ

とです。

ちなみに,生年を単純に引くと,Fisher が独自の方法でzの分布を

導いて Gosset との交流が始まった 1912年は,Fisher 22歳,

Gosset 36歳ということになります。以上。