Durbin-Watson test

http://www.f.waseda.jp/ykondo/ja/edu/lectures/econometrics/2003/

後期第4回と5回に

本日のテーマ:誤差項の系列相関

系列相関の検定方法 1:補助回帰による方法(前回の復習) Y を X に回帰し,残差を求める

Y を (X と 1 期前の残差) に回帰し,1 期前の残差の係数について ゼロか否かの検定を行う (t 値を利用.t 分布ではなく標準正規分布で良い).

Step 2 では標本の大きさが 1 小さくなっている (i = 1, 2, ..., n ではなく i = 2, ..., n になっている).

系列相関の検定方法 2:ダービン・ワトソン統計量(ダービン・ワトソン比) Y を X に回帰し,残差を求める

DW = (残差と 1 期前の残差の差の 2 乗和) ÷ (残差の 2 乗和)

統計量の帰無分布が説明変数の値に依存するので,統計表は無い. 代わりに,簡便法 (上限分布と下限分布の臨界値を利用) で検定を行う方法が 普及している.

ラグ付き内生変数が説明変数に含まれる場合 補助回帰による方法:使用可能

ダービン・ワトソン統計量:使用不可能

誤差項の系列相関のまとめ: 様々な原因により誤差項に系列相関が生じ得るが, 特定化の誤り (重要な説明変数の欠落, 2 次式等にすべきところを 1 次式にしている,など) が典型的な原因である. とくに,(系列相関が認められる場合には) 重要な説明変数が欠落していないかを検討してみること.

残差の時系列プロットを作成し, 規則的な変動があるか否かを検討すること. 補助回帰やダービン・ワトソン統計量による検定だけに頼らない方が良い.

検定: 標本の大きさについて: ダービン・ワトソン統計量は統計表 (臨界値の数表) を見て, 適用可能な標本の大きさを確認すること. 補助回帰による方法は漸近理論に基くので, 標本が十分大きいときにのみ適用可能.

ラグ付き内生変数について: ラグ付き内生変数が説明変数に含まれる場合, ダービン・ワトソン統計量は適用不可能だが, 補助回帰による方法はそのような制限は無し.

誤差項の正規性について: ダービン・ワトソン統計量は誤差項が正規分布に従う場合に適用可能. 補助回帰による方法はそのような制限は無し.

誤差項の自己回帰過程の次数について: ダービン・ワトソン統計量は AR(1) を想定したものだが, 補助回帰による方法は,AR(2), AR(3) などを想定した検定に容易に拡張可能.




多重回帰の諸問題・諸性質 (単純回帰では問題にならないこと) 決定係数と自由度修正済み決定係数 (教科書 pp. 110--112) 説明変数の個数が異なる場合は自由度修正済み決定係数を使用

被説明変数が異なる場合は (自由度修正済みか否かに関わらず) 決定係数によるあてはまりの比較は出来ない (教科書の ストック・モデルとフロー・モデルの比較を参照のこと)

自由度修正済み決定係数は 0 以上とは限らない


回帰係数推定値の意味 新たな説明変数を追加すると, その他の説明変数の係数推定値も変化してしまう. 重要な説明変数が欠落していると, 推定値は信用できない

偏微分と同様の意味を持つ: 「モデルに含まれる他の変数の影響を取り除いた後での (あるいは他の変数をコントロールした後での), 被説明変数と当該変数との単純回帰係数 (教科書 p. 100)」という意味を持つ. 証明は省略するが, 教科書 pp. 100--102 および 補助資料 を参照のこと.